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俺には、3才下の妹がいた。

華奢で、自分の妹ではないのではと思うほど美しく透明感をもつ妹だった。もし、他人であれば全く手の届かないような・・・

妹は聴覚が弱かった。そのせいで、同学年の子たちからいじめられることが多かった。

わがままに育てられた俺は、無理にでも事をなす強引な存在だった。けんかに負けたことはなかったし、勉強も誰よりできた。

そんな俺は、妹を守り続けた。「お兄ちゃん」って涙ぐむ妹に、餓鬼どものちょっとした悪戯さえ許さなかった。

一方で、毎日の嫌気の中、何度も泣きつきたくなった妹。

いつも、「なあに?」って、微笑んでくれた。

俺は、妹を守り続けた。

しかし、かけがえのない妹は死んだ。小児がん、脳腫瘍だった。

一人残された俺。今こうした最悪の状況の中で、もしお前がいたら何て答えてくれる?

それとも、何も言わないまま、また笑顔一つで、俺を窮地から救い出してしまうの?

俺は、間抜けにも未だ生き続けている。

けど、純粋な気持ちで、俺はこの妹を守るためなら死ねると思っていた。いや、この妹と一緒に死ぬことが俺の人生の意味なのかもしれないと思っていたんだ。

しかし、妹はそれを許してくれなかった。

俺は、最期のぬくもりを放つ妹を精一杯抱きしめた。

病魔という冷たく激しい雨から守ろうと、細い息、細い身体の妹を、闇明けるまで抱き続けた。

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始末

死神が現れた。

そして、「どちらまでお送りしましょうか」って・・・

「どこでも良いから連れて行ってくれますか」って、俺は頼んだ。

死神すら困惑していた。

俺の始末を・・・

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戦争を知らない子供たち

気持ちの悪い歌だ

“僕らの名前を覚えて欲しい~~”

おこがましい

気持ちの悪い歌だ

今の小学校の音楽の本にはないらしい

良かった・・・

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17歳

俺は17歳の時に

一生分の

情熱の核と

憂鬱の種を

植え付けられた

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iPhone

寝坊した。だから急いでいた。

トレーナーを着た。前後逆だった。首が苦しい。

玄関へ。靴を履いた。「違和感」。左右の靴が違う。

時間がないのに、自分の間抜けさに苦笑する。 

せめて、上下は間違えないように・・・

頭が上、足が下。

確認してようやく出かけると

駅直前で、家電(いえでん)の子機を持っていることに気が付いた。

今頃、iPhoneの充電は100%。

今日はあきらめた。

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同じ形、同じ大きさ、同じ色の扉が、数えるには面倒なくらい並んでいる

躊躇する しかし、どれかを選び、開け、あちらにいかなければならない

とはいえ、選ぶには情報が不十分すぎる 皆同じなのだから

背中を押してほしい 誰かに いっそのこと、はずみで向こうへ行ってしまいたい

選択の余地、時間は、まだ少しある

ただ、考えることをやめた おれは一つの扉を選んだ

そして、開け、入った

運の悪さに今更嘆く

魔物たちが、手ぐすねを引いて待っていた

「よく来たな」 眼だけ光る影が言う

「お前は何が不満なんだ」 濃い緑のどくろが尋ねる

俺は、必死に「すみません、間違えました」と訴える

しかし、時はすでに遅い

しかも、理想と程遠い現実に怒りをもつ俺が、この扉を選んだのは必然だったのだ

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時間

昨日も、今日も、そして、おそらく明日も、

「奴」は引き裂こうとする

あれほど仲の良かった友人は、遠く離れた街で戦っている

思い出を忘れ、記憶だけを信じて

俺は、「奴」の甘い誘いを断ち切る

臆病者のレッテルと引き換えに、ここに残る

だって、帰って来るかもしれないから

ここにいた友人たちが

愚かしい純粋な気持ちをのぞみに帰ってくる者が・・・

そのとき俺は、年月が培った卑屈さを隠して微笑むんだ

そして、語りかける

「何もかもあの時のままだよ、多少なりとも何か変わっていれば良いのにね」って・・・

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結局

おととい、道ばたにたむろしている奴らとけんかしたことも

きのう、大学の午前中の授業サボったことも

きょう、定時に電話しなかったことも

結局、結局、彼女なら許してくれる

ごめん ありがとう

おとといのせいか、左頬が痛い

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予感

初日の出を待つ車のラジオから、この十年を彩ったヒット曲が次から次へと流れてくる中で、あふれ出す感情に耐えることができない

隣のシートで寝ている彼女に精神のすべてを委ね、感情を予感に変えている

何かが新しく始まりそうな予感を感じている

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不恰好

気づかぬうちに、いくつものきれい事を並べてきていた

目を背けることで、答えの出せない矛盾を正当化してきた

一体どれだけ、肩を抱いてやれば、その震えが止まるのだろう

一体どれだけ、言葉を尽くせば、信じることができるのだろう

のしかかる悲しみの中で

不恰好な自分だけがさらけ出されていく